第5話 音楽をより楽しむために改良されたオルゴール

 ピンポロ〜ン!こんにちは。ボク、「オルゴール」。

 前回からは、ボクの最初のヤツを紹介したね。

 今回、ご紹介するのは、その後に仲間入りした「ディスクオルゴール」。こいつは、なかなかの優れものなんだ。

 シリンダーオルゴールが、だんだん広まってきたら、ボクに対していろいろな期待がされるようになってきた。だって、それまで音楽って生演奏しか聞くことができなかったんだから、その頃のボクはとっても便利で、楽しい機械だったんだよね。
 もっと「長い曲を」、もっと「安い値段」でという要望からみんなで聞きたいからもっと「大きな音で」などなど、いろいろな声が上がってた。

 そう、その頃(1880年頃かな)、ボク以外に人気が出てきた親戚みたいな機械がどんどんもてはやされたんだ。
 それは、「手回しオルガン」 の仲間。もっともこれもボクの仲間の一部なんだけど。
 曲のデータが、厚紙や鋼鉄、亜鉛などで作られた円盤に記録されていて、それをオルガンを使って音を再生させる機械だ。
 その円盤は、演奏で使う楽譜の音符と同じように、それぞれの音にあった場所に穴が開いていて、そこから空気が入ることで特定の音を出すようにしていた。やがて、この円盤は板状にして折りたたみ式になったり、ロール状になったりしていったんだ。今でもヨーロッパの古い街では、「ストリートオルガン」 って名前で演奏されたりもするよ。折りたたみ式になったり、ロール状にするといくらでもその長さは長く出来る。理屈で言えば、無限だね。
 さらにこのいいところは、とにかく穴を開ければいいわけだから、プレス機のようなもので、ガチャン、ガチャンってやれば大量生産もできるわけだよね。ということは、買ってくれる人が多くなって、プレス枚数も増えれば、当然値段も安く出来る。

 それをオルゴールに応用したものが「ディスクオルゴール」。今までのシリンダーにあたる部分を鋼鉄製の円盤にして、ピンの代わりに穴を開けて、その穴に引っ掛かって回転して櫛歯をはじく「スターホイール」という小さいけど大きな役割の新兵器が、綺麗な音を出せるようにしたんだ。

 ディスク1枚で1曲。1回転で1曲。オルゴールを鳴らすためにはこのディスクをセットすればいいんだ。新曲が出たり、聞きたい曲があったらディスクを買ってくればいい。レコードに似てるよね。ディスクは、オルゴール本体の大きさによって違うんだけど、小さなサイズだと10cm強、大きなものだと直径80cm近いものもあったんだ。いわゆる家庭用のものから大型の営業用までいろいろなものが作られていたってことだね。本体の下にちゃんとディスクをいれる棚みたいなものがついているものも多くて、それだけ重宝されていたってことかな。

 そうなると当然、本体も大きくなってきて高さが2mを越えるものや移動してどこでも聞けるようにしたもの、家具感覚で置けるものなど、いろいろなものが作られた。かなりのブームだったんだよ。1903年にある有名オルゴールメーカーの販売記録では、販売オルゴール台数が焼く6千台、ディスクが10万枚というのがある。当時の話だから、いかにすごい人気だったかがわかるよね。

 みんなが好きな音楽を、好きなところで、好きなように聞ける、しかもいい音でというようにさらに改良が重ねられていったんだ。そのいくつかを紹介するね。

 まず、みんなが集まる場所(例えば、駅の待合室、ロビー、喫茶店とか)におかれたのが、1曲いくらで曲が聞けるというもの。もちろん曲も選べる。お金を入れるところがついててね。お金を入れなければ音楽は鳴らないよ。ちょっと古いけど、今で言うジュークボックスだね。

 もっと音をよくするために改良されたのは、音域を広げたり、強弱をつけるために櫛歯やディスクを2つ設置してそれぞれが違った役割をするように仕掛けたもの。当時この時術は最先端。なぜならば、2枚のディスクを同時に一緒に回転させなければならないからだ。そんな技術は大変だった。
 でも、これが出来るようになると、すごい音楽に臨場感がでる。例えば1枚のディスクには強い音が欲しい場所だけ音が出るようにしておけば、その部分は2重の音になって強弱がつく。また、2枚のそれぞれの櫛歯を低音用、高音用としておけば、音の高低の幅が広がる。もっともこの考え方はシリンダーオルゴールにもあったんだけどね。

 最も優秀な仲間を紹介するね。
 こいつの名は、シンフォニオン社(ドイツ)の「エロイカ」 。高さは2mを越える。その中に縦3枚のディスクを入れて演奏するんだけど、1枚のディスクに対して、50歯の櫛歯が左右2箇所、計100歯。それが3枚分あるから、全部で300歯の音を持つんだ。しかも上段のディスクから下段にかけてそれぞれ、高音、中音、低音を担当している。
 さらに、この本体にはディスクを入れておく棚がなく、下1/3のスペースは反響箱の役割になっているので、大きな音とともに響き、さらに広い音域を持つすばらしいオルゴールなんだ。
 このオルゴールは、オルゴールの概念を一新するくらい素晴らしい音だよ。以前、1200万円で売りに出されていたけど、いい買い物だと思うよ。

 こんなにもてはやされたボクは、そのあと、1877年エジソンの蓄音機の発明で、だんだんいらなくなってきてしまったんだ。

 それでも頑張ったよ。ディスクオルゴールのディスクをレコード盤に差し替えて、レコード針のついたメガホンみたいなものをつけた商品も出された。

 それでも、やはり勝てなくて、 1910年頃にはもう作られなくなってしまったんだ。

 その後は小型化されたものや受注生産で今でも作られたいる。まだまだ小さいながらにも頑張っているんだよ。もう今ではもともとの意味とは違う目的で使われているけどね。

 

 さて、次回は、ちょっと変わったボクの仲間を紹介するね。

 じゃーね。ピロリ〜ン!

 

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